第16章 傷
新選組では、今までの働きが認められたのか幕府から直々に、将軍様の警護の要請が入った。勿論局長である近藤も、副長である土方も新選組がようやく幕府のお偉い方に認められたと、嬉々としてその場にいた隊士達に報告した。
隊士達もまた、幕府直々の命ということもあり、その名誉ある要請に心躍らせる者も少なくはなかった。その場にいた千鶴と志摩子は、二人して顔を見合わせ土方達の話に耳を傾ける。
そして近藤が声を大にして、隊士達へと言葉を投げた。
「我ら新選組の晴れ舞台だ! 将軍様が二条城へ参られるまで城の警護に当たることとなる。それに伴い、隊の編成だが……」
「おっと近藤さん、悪いが総司は今回外してやってくれねぇか? 風邪気味みてぇだから」
「ん? そうなのか? 総司、大丈夫か」
「はぁ……僕的には問題ないんですけどね。土方さんは過保護だから」
「さっきも変な咳してたろうが」
「はいはい」
沖田は大きな溜息と共に、恨みがましげに土方を軽く睨み付けていた。すると今度は、江戸から戻って来た藤堂がすっと手を上げた。
「どうした、平助」
「あ――……近藤さん、実は俺もちょっと体調が」
「なんだ、平助も風邪か? 折角全員そろって将軍様を迎えたかったのに」
「えっと……すんません」
「いや! 体調は大事だ。いずれまた機会もあるだろう、その時は二人共宜しく頼む」
土方は徐に立ち上がると、千鶴の前へとやってきた。
「お前はどうする? 千鶴」
「わ、私ですか? でも、あの……」
声をかけられた千鶴は戸惑いながら、顔を伏せた。それもそうだろう、新選組の晴れ舞台に一応部外者である自分が……とでも思ったのかもしれない。それを見抜いているであろう土方は、ふっと笑った。