第15章 祈
「一様は、よくあの道場で一人稽古を?」
「……ああ。一人の方が落ち着くからな」
「誰かと打ち合ったりはしないのですか?」
「俺と手合せ出来るほどの腕前が、いないからな。総司や副長くらいしか……」
「初めて私は道場で稽古を覗いた日も、一様は歳三様とお手合わせしていましたね。どちらがお強いのですか?」
「さあ、どうだろう。いざという時は、やはり副長の方が強いのではないかと思う。あの迷いのない剣は、まさに新選組の副長に相応しい真っ直ぐな剣だ」
「……一様は、歳三様のことを尊敬しているのですね」
「ああ、勿論だ」
あの人がいるから、俺はこの新選組にいるも同然。あの人の背中を見て来た、だからこそあの人と共にこの剣を振おうと決めた。
為すべきことを、与えられた瞬間の中で為す。俺にはそれしか出来ない。だが、少しでも出来ることがある。それが今は嬉しいと思う。
「志摩子には、為すべき道はあるか」
「為すべき……道?」
「そうだ。己が決めた道での自分が為すべきこと、信念。あんたにそれはあるか」
「……まだありません。皆様が羨ましいと、時々思います。明確な目的がありそれに向かい迷いがない。一生懸命何かのために、誰かのために生きる姿は……まさに武士です」
「そう、思うか?」
「え……?」
「俺達の生き様は、武士だと思うか?」
それを志摩子に問うべきなのか。けれど聞いておきたい、志摩子が俺達を武士と呼んでくれるのであれば……。