第15章 祈
「むっ、総司も手伝いか? 珍しいな」
「誰かさんが全然帰ってこないから、僕がこうして手伝っていたんでしょ」
「そうだったのか……すまない」
「別にいいよ。その分志摩子ちゃんとお話が出来たからね」
「二人は仲がよいのだな」
俺がそうなれたらいいのにと、思いながら。
「羨ましい?」
「……そんなことはないぞ」
ああ、羨ましい。時々俺は、お前になりたいとさえ思うよ。総司。
「あーあ、手伝うの飽きちゃったなぁ。僕もう部屋に戻るね?」
「総司様。手伝って頂き、本当にありがとうございました」
「これくらい全然構わないよ。それじゃあ、後は一君宜しくね」
「ああ」
総司の背を眺めながら、俺は洗濯物を志摩子の傍に置いた。どちらにしても、どんなに羨ましいと思ったところで俺は俺にしかなれない。そんなことは、誰に言われなくとも俺自身が一番よくわかっていることだ。
誰かの真似をしたところで、それは俺ではない。俺は俺として、志摩子の傍にいられる男になりたい。そう……少なくとも、思う。
「志摩子、俺が総司の続きをしよう。そのまま続けていてくれ」
「はい、わかりました」
傍に居たいなどと、なんとおこがましいのだろうか、俺は。そんなこと……新選組隊士である俺が、望めるはずもない。こうして一緒にいる時間さえ、いつ終わってしまうかもわからないのに。いざとなったら、俺は新選組のために志摩子を斬らねばならぬ日も訪れるやもしれないというのに。
情を持てば持つほど、俺は彼女を殺せなくなっていくのかもしれない。
そんなことあってはならない。