第15章 祈
「雪村?」
「中身は金平糖です。先程近藤さんから貰った物なんですが、良かったら志摩子さんとお二人で食べて下さい」
「しかしこれは、あんたが近藤さんから貰った物。それを受け取れるはずが……」
「お願いします! 実は志摩子さん、金平糖を食べたことがないらしくて……食べさせてあげたいんです」
「な、なるほど……そんな事情があったのか。なら俺が責任を持って志摩子に渡しておこう」
「勿論斎藤さんも食べてみて下さいね? きっと美味しいですから」
なんだか申し訳ない気持ちもあるが、志摩子が金平糖を食べたことがないなどとは……それは確かに是非食べてもらいたいものだ。色とりどりの綺麗な金平糖を見れば、また志摩子は笑ってくれるかもしれない。
俺は彼女の笑顔を想像しながら、洗濯物を抱えてようやく彼女の元へと戻ることが出来た。しかし……。
洗濯をしているはずの場所には、志摩子と総司がいた。二人は相変わらず様々な表情を見せながら、楽しそうに話している。
「何を話しているのだろうか……」
時々見せる志摩子の悲しそうな顔。まるでそれを晴らすように総司が彼女に寄り添っているように見えた。
志摩子の隣には、いつだって総司がいる。勿論総司だけとは言わないが、志摩子の憂いを晴らしているのは確かに総司だ。俺にはわかる。あの日……泣きそうな彼女を俺から連れ去ったのは、紛れもなく総司なのだから。
――ごめんね、これは僕の役割だから。取らないでね。
総司のあの言葉が、俺の頭の中で反芻する。本当に、俺らしくない。気を取り直して、まるで今来たかのように取り繕って二人の元へ歩み寄る。