第15章 祈
「どうして一君も一緒なの?」
「一人だと重たいだろうと仰られて、お手伝いして下さってるんです」
「ふぅん、一君が手伝い……ねぇ?」
総司の顔はいつものような悪い顔をしていた。どうせつまらないことでも考えているのだろう、言いたければ言えばいいものの。
「何か言いたそうな顔だな、総司」
「ああそうだね。今の時間って一君、一人鍛錬中のはずなのにどうしてかなって思っただけだよ」
「確かにそうだが、いつも志摩子には家事を任せてしまっている。休みの日くらいは、手伝いをすべきだろうと思ったに過ぎん」
「本当にそれだけかなぁ? 一君は志摩子ちゃんと一緒にいたくて、率先して手伝いを申し出たんじゃないのかな?」
「え、そうなんですか? 一様」
「俺がそんな不純な動機で、手伝うわけがない」
自分で口にしておきながら、急に気恥ずかしい気持ちに駆られ、つい襟巻を口元まで上げて顔を隠す努力をしてみる。こんなもの気休めにもならないことくらい、知っている。
「洗濯物溜まってるから、持って行ってもらえないかな?」
「はい! 元々そのつもりで、総司様を探していました」
「そうなんだ。じゃあ、少し待ってて」
総司が一度部屋に入ったのをきっかけにするように、俺は志摩子へと声をかけた。