第15章 祈
「一様?」
「俺が自分でその場まで持っていく」
「ええ!? そ、それでは私が来た意味がありません!」
「志摩子に俺が先程まで着ていた物を、渡す気にはなれん」
「ですが……っ」
「どうせ他の者達の洗濯物も、これから尋ねに行くのだろう? 一人では大変だろう。俺も手伝おう」
いつも彼女達に任せてばかりなのだ、たまには俺も力を貸してやらねば。いつの間にか副長の姿がなくなっていることに気付き、俺は慌てて廊下へ出た。
「副長!」
何か用事があったのではないだろうか? そう思い引き留めてみるものの。
「用は済んだ。戻る」
そう言って、早足で去っていかれた。もしや、志摩子の前では言えないことなのかもしれない。後で副長の様子を伺いに行かねば……。その前に、俺には志摩子の洗濯物を手伝うという仕事がある。
「志摩子、行こう」
「そうですね、行きましょうか」
途中で出くわした隊士達にも声をかけ、洗濯物は瞬く間に増えていく。やはり俺が着いてきて正解だ。すると、自室から出ている総司の姿があった。勿論志摩子は、総司へも声をかける。
「総司様! 此処にいらしたんですね」
「あれ、志摩子ちゃん」
総司の表情が、志摩子を見る時だけ柔らかくなるのを本人は気付いているだろうか? けして隊士達には見せない、俺にさえ見せないその表情はきっと……志摩子だけのものなのだろう。
何かと雪村にもちょっかいをかける総司だが、特に志摩子には下手な理由をつけてちょっかいをかけているように思う。それだけ総司にとって、志摩子は気になる存在なのか。