第15章 祈
剣を磨くということは、己の心を磨くことにも繋がっていく。無心になり剣を振れば、俺の為すべきこともまた見えてくる。誰もいない道場は冷たくもあり、寂しくもある。だが人の気配を感じないでいられれば、いつかこのままこの世で一人きりになれるかもしれない。
それを望んでいるというわけではないのだが。
「一様! 此処にいらしたのですね」
「志摩子と……副長」
「一様だけ、洗濯物が見当たりませんでしたので探していました。もしあれば今のうちに出して下さい」
「ああ、そういえば。ある程度は自分で洗った、だからない。ただ……今しがた汗をかいたので、道着なら……」
「一様が良ければ、お洗濯いたします」
「そうか……なら少し待っていてくれ。着替えてくる」
志摩子は気付けばよく副長と一緒にいる。妹、という義務をきっちりと果たしているのだろう。常に仲睦まじく振る舞っている。感心なことだ。副長もそれのせいだろうか、志摩子と共にいる時の方が最近は多く見かけるようになった気がする。
いいこと、と言っていいのかわからないが悪い事ではないと思う。二人が仲睦まじいのはいいことだ。時々少し、胸の奥がずきりと痛む気がするのは疲れが溜まっているのかもしれない。休養も、適度に取らねば。
それよりも俺は……志摩子が総司と仲がいい方が、とても気になるように思う。あの二人は気付けば深刻そうな顔で話し込んでいるし、と思えば総司が志摩子をからかっていたりする。ああでも……なんだろうか。
もしかしたら、志摩子は総司のことを……などと心の何処かで考えてしまう自分がいる。
結局のところ、俺には関係のない話のはずなのにだ。
洗濯物を抱えて志摩子達の元へ戻ると、俺はそのまま行くぞと先を歩く。