第14章 艶
「そうですか……そう、ですよね。最終的には、私がどうするかですよね。すみません、総司様。お話を聞いて頂きありがとうございます」
「ううん、気にしないで。僕はいつでも君の話を聞いてあげるから、頼ってね」
「はいっ」
こうして志摩子ちゃんが僕だけを頼ってくれているのが、今はとても嬉しい。でもこれから先、きっと彼女は僕じゃない人を頼る時も来るだろう。それが土方さんだろうが、一君だろうが僕は今のところ譲る気はないけどね。まだ駄目。
陽気な太陽が眩しくて、僕は目を凝らす。志摩子ちゃんと一緒に見る太陽は、なんだか眩しい。
「一様、遅いですね」
「どうせ適当に誰かに絡まれてるんじゃないのかな? って……あれ?」
屯所を出ていく珍しい二人。あれは……千鶴ちゃんと土方さん? なんであの二人が。
「総司様、どうかされましたか? きゃっ」
「君は見なくていいの!!」
咄嗟に志摩子ちゃんの視界を手で覆い隠す。何してんのさ土方さん……よりによって、千鶴ちゃんと二人で出かけるなんて。二人の姿が消えたところで、手を離した。
「何をなさるんですか、総司様」
「世の中にはあるでしょ、見なくてもいいものってのが。僕は今それから君を守ってあげたんだよ」
「もう……からかわないで下さい」
そう言って頬を膨らませて拗ねる志摩子ちゃんを見て、僕は微笑んだ。何気ないこの時間がとても好きだ、かけがえのない大切な時間だ。
彼女といると何もかもを忘れてしまえるような気がした。いや勿論そんなはずはないのだけど、志摩子ちゃんが笑ってくれるなら……泣かないで済むなら。僕はこの全てを賭けて、きっと彼女を守るだろう。
僕じゃ彼女の涙を拭えないけど、泣かない様にしてあげることなら出来るように思うから。
きっとね、君の涙を止めてくれる人は……僕なんかよりもずっと傍に、いるはずだから。