第14章 艶
「いえ、特に何も……理由はないのです。歳三様にも先程、同じことを言われました。私は、そんなに歳三様を避けているように見えますか?」
「うん、見える。僕で良ければ話してみれば? 力になれるかもしれないよ」
「ですが……」
「僕が君の本音を全部受け止めてあげるって言ったでしょ。ほら、早く」
「……その、実は」
いざ話を聞いてみると、実に拍子抜けする内容だった。
風間のことで、土方さんに何か言われたらしいけど……どうやら彼女が土方さんを無意識的に避けているのは土方さんの"嫉妬"が原因らしい。いや、たぶん当人同士嫉妬が原因だなんて思ってないだろうけど。
「新選組より千景様が大事なのかと、強く問われどう答えていいのか……。そもそも比べようがありませんし、私は単純にどちらも大事です。ですから……」
「まぁ、なんていうか。それは志摩子ちゃん悪くないし、気にしなくていいと思うよ」
「え……? そう、なのでしょうか」
そんな不安そうな顔しちゃって。土方さんのこと……志摩子ちゃんはどう思っているのかな。好き、だったりするのかな。
「気になる? 土方さんのこと」
「……気になると言いますか、どう上手く接していいのか急にわからなくなってしまって。そうしましたら、どうしてか……避けているように見えるらしいですね」
「だから意識しなくていいんだって。あれはね、土方さんの心の事情だから君はちょっと八つ当たりされただけ。意外と話を聞いてあげれば、解決すると思うよ。ちゃんと話し合うべきだ」
「そうすれば、今まで通りになれるでしょうか?」
「それは志摩子ちゃん次第だよ」
自分でどうにかするしかない。だって僕が言えることは、本当にそれだけでどうしたら今まで通りになれるかなんて、僕にだってわからないんだから。そこはね、本人に聞くべきところだよ。志摩子ちゃん。