第14章 艶
「洗濯物溜まってるから、持って行ってもらえないかな?」
「はい! 元々そのつもりで、総司様を探していました」
「そうなんだ。じゃあ、少し待ってて」
一度部屋に戻ると、大量の洗濯物を抱えて志摩子ちゃん達のところまで持っていく。庭で大きなたらいを前に、懸命に洗濯物をしている志摩子ちゃんがそこにいた。あれ? 一君がいなくなってる。
「志摩子ちゃん、一君は?」
「あ、はい。他の隊士の洗濯物を持ってくると、行ってしまわれました」
「そう……あ、これ洗濯物」
「ではそこに置いて下さい。後でやっておきますね」
「志摩子ちゃんさ……飽きない? 家事」
「え? いえ、そんなことはありませんよ。これも大切なお仕事ですから」
「仕事ね……」
そうは言うけれど、この洗濯物の数は僕でもぞっとするほどだ。こんなもの押し付けられたら、たぶん僕なら怒るね。
「……何か手伝ってほしい?」
「総司様にですか? あ、いえ……折角のお休みだそうですし、ゆっくり過ごして下さい」
「この僕がわざわざ手伝ってあげようかって言ってるのに、無下にするの?」
「え!? そういうつもりではないのですが……」
「……そういえばさ、最近志摩子ちゃん土方さんを避けてるでしょ?」
「え……?」
拍子抜けした顔で、志摩子ちゃんは僕を見上げる。僕が気付かないとでも思った? 意外と見てるんだからね、これでも。
土方さんと志摩子ちゃんと言えば、何かとよく一緒にいるところを見かける。隊士の間では一部話題だ、あの鬼の副長が妹と仲睦まじくよく話し込んでいるってね。事情を知らない隊士達からすれば微笑ましいのかもしれないけど、僕達からすればそんなに仲がいいんだって気になりはするよね。
ずるいな、土方さん。いつの間に志摩子ちゃんとそんなに仲良くなったんだろう。僕だって、ようやく彼女とよく話すようになったってのに。
でも、気付いた時には何故か志摩子ちゃんが土方さんを避けているように見えた。喧嘩でもしたのだろうか? ますます気になる。