第14章 艶
「総司、志摩子を見かけなかったか?」
「なんだよ左之さん……知らないよ。僕がいつでも彼女の居場所を知っているとでも思ってるの?」
「今から洗濯物するから、洗ってほしい物があれば持っていけって言われてるんだ。お前もあれば、早く持って行った方がいいぞ」
「あっそ」
僕がそう返事をすると、左之さんは洗濯物を抱えたまま去っていく。そういえば、家事全般を志摩子ちゃんや千鶴ちゃんに任せてからというもの、僕達は随分楽させてもらってるなと思う。
「総司様! 此処にいらしたんですね」
「あれ、志摩子ちゃん」
噂をすればなんとやら、志摩子ちゃんが一君を連れて洗濯物を抱えてやってきた。
「どうして一君も一緒なの?」
「一人だと重たいだろうと仰られて、お手伝いして下さってるんです」
「ふぅん、一君が手伝い……ねぇ?」
疑惑の眼差しを一君に投げかければ、むっと彼の顔がしかめっ面に変わる。
「何か言いたそうな顔だな、総司」
「ああそうだね。今の時間って一君、一人鍛錬中のはずなのにどうしてかなって思っただけだよ」
「確かにそうだが、いつも志摩子には家事を任せてしまっている。休みの日くらいは、手伝いをすべきだろうと思ったに過ぎん」
「本当にそれだけかなぁ? 一君は志摩子ちゃんと一緒にいたくて、率先して手伝いを申し出たんじゃないのかな?」
「え、そうなんですか? 一様」
「俺がそんな不純な動機で、手伝うわけがない」
そう言いながら、襟巻を口元まで上げる一君。うん、これは明らかに嘘をついている時の反応だ! わあ、一君ったらやっらしい! とからかってあげたいのは山々だけど、今一番問題なのはそこじゃないんだよなぁ。