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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第13章 鴇



「ふふっ、でも近藤さんも新選組局長なわけですし、きっと引き締まっていると思うのですが」

「全然だぞ、永倉に比べるとますますな」

「あの人と比べてはいけないと思います!」

「ん――まぁ、確かにな」


 談笑しながら、時々人に綱道さんのことを尋ねて歩く。やっぱりというか、手掛かりになりそうな話はなかった。


「今日も父様に繋がる情報は、得られませんでしたね」

「そんなすぐに情報が手に入れば、苦労しねぇだろ。こういうもんは、気力だ気力。根負けすんじゃねぇぞ」

「はい! 頑張りますっ」


 それでも何処か浮かない顔をするこいつを、どうにかして元気づけてやりたくなって……。


「おい、少し遠回りして帰るぞ」

「え? あ、はい」


 もし隣にいるのが千鶴じゃなくて、志摩子だったら。俺はどうやってあいつを元気にすることが出来るのだろうか。どうすれば、あいつを笑顔にしてやれるのだろうか。


 俺は一番お気に入りの町外れの丘へ、千鶴を連れて行った。丁度夕陽が沈もうとしているところで、淡い橙色の光が眩しくそして美しかった。


「土方さん、夕陽……凄く綺麗ですね」

「そうだろ? 俺のお気に入りだ」

「その気持ちわかる気がします。えへへ、連れてきて下さってありがとうございます!」

「……お、おう」


 太陽のように笑う彼女は、とてもじゃないが志摩子とは違っていて。でも……こうして近くにいる奴も笑顔に出来ないようじゃ、俺が志摩子を笑顔にすることなんてたぶん出来ないのだろう。


「また連れてきてやるよ」


 願わくば、次に俺の隣にいるのは……――でありますように。

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