第13章 鴇
「一様! 此処にいらしたのですね」
「志摩子と……副長」
「一様だけ、洗濯物が見当たりませんでしたので探していました。もしあれば今のうちに出して下さい」
「ああ、そういえば。ある程度は自分で洗った、だからない。ただ……今しがた汗をかいたので、道着なら……」
「一様が良ければ、お洗濯いたします」
「そうか……なら少し待っていてくれ。着替えてくる」
奥の部屋へと消えていく斎藤は、何も言わない俺をちらりと見るが俺が力なく笑うと、何も聞かずそのまま。結局俺は、気になっていただけだ。もしかしたら斎藤と志摩子が……と。いやいや、あいつらが仲睦まじくしている姿なんてほとんどないに等しい。
だからこそ……あの雨と雷の日。鮮やかに志摩子を抱き留めた斎藤が、あまりにも自然に見えて。あの二人が、まるで……当然のように見えて。少しだけ、な。
「歳三様、私がいると用事を済ますことが出来ませんか?」
「あ……?」
「いえ、一様に何も言葉をかけませんから。気になって」
「気にすんな。あってないような用事だ」
すぐに斎藤が戻ってくると、洗濯物を抱えたまま志摩子に渡す様子もない。
「一様?」
「俺が自分でその場まで持っていく」
「ええ!? そ、それでは私が来た意味がありません!」
「志摩子に俺が先程まで着ていた物を、渡す気にはなれん」
「ですが……っ」
「どうせ他の者達の洗濯物も、これから尋ねに行くのだろう? 一人では大変だろう。俺も手伝おう」
俺はそっとその場を後にする。俺がいたところで、何も出来やしない。