第13章 鴇
「志摩子お前……最近俺のこと、避けてねぇか?」
聞いていいのか、どうなのか……。だけどこのままこいつと距離が出来たままなんて、そんなの御免だ。出来ることなら、いつも通り接していてほしい。変わらないでいてほしい。どうして……そう思っちまうのかな。
「さ、避けてなんておりません! 避けてなんて……」
「ならどうしてそう、俺と距離を開けて歩く? 俺の近くにいたくないんだろう」
「そんなこと一言も言ってないじゃないですか!」
「じゃあ、無意識だっていうのか!?」
「だから私は、避けてなど……っ!」
「なら……」
俺は志摩子の腕を掴もうと手を伸ばした。けれどあいつは、それを拒絶するように反応して慌てて手を後ろへと引く。その行為が、全てを物語ってるんじゃねぇのか?
「ほらみろ。俺に、触れられたくもないんだろう」
「そんな……ことはっ」
逃げていく、俺の手から。いつの間にか、こんなにも。
「……悪かったよ。もう、触らねぇから避けようとすんな」
「避けてません!」
「はいはい」
どうしたって一度出来ちまった距離は、埋められないのかもしれない。なら後は時が解決してくれるとでも言うのか? 馬鹿言え、んなもん待ってられるか。
そうこうしているうちに、俺達は道場に到着する。