第13章 鴇
「歳三様、一様を知りませんか?」
「あ? 斎藤? 知らねぇな」
「そうですか……」
「何かあったのか?」
不意にやってきた志摩子は、何かと思えば斎藤を探していた。斎藤に何の用があるんだろうか……。
「いえ、お洗濯をと思ったのですが一様の物が一切なかったようなので、洗う物がないか確認しようかと」
「……この時間なら、道場にいるんじゃねぇのか?」
「稽古でしょうか? ありがとうございます。行ってみます」
「あ――……ちょっと待て、俺も行く」
「歳三様も一様に御用ですか?」
「……まぁ、そんなとこだ」
別に斎藤に用なんてねぇ。ただ……志摩子と斎藤が二人きりになるところを想像すると、どうしても腑に落ちなくて。つい着いて行くだなんて、口にしちまった。
――行くな、なんて。言ったらこいつはどんな顔をするんだろうか。なんてな。
「おい志摩子、どんどん先行くな。もっとゆっくりでいいだろう」
「あ、いえ。お気になさらず」
俺が志摩子に風間のことを伝えた時から、少しだけ俺と志摩子の距離は開いたように思う。それは俺があんな間抜けなことを抜かしたことが、そもそもの原因だろう。
志摩子にとって、風間千景は本当に大きな存在なのだろう。それがどんな感情からきているのか、柄にもなく俺は気になって仕方なかった。気にしたところで何になる? 知ってどうする? どうも出来ない癖に、ただあいつを見守ることしか出来ない癖に。
俺は……最低な男だ。