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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第13章 鴇



「……そろそろ、志摩子が来て一年になろうとしているのか」


 時が過ぎるのは早い。そう改めて実感したのは、雪村と出会ったあの冬が全ての始まりだったように思う。今までもそうだ。時が過ぎるのは早く、俺は後悔する暇も思い出に浸る暇も、悲しみに心を濡らす時間さえなかったように思う。

 ただ流れていく時に、けして己を持っていかれぬようにと……。俺は必死に今を生きてきたように思う。


 雪村との出会い自体、俺からすれば予想だにしていないこと。だが然程大きな問題でもなく、成るようになるもんだと初めて知った。だが志摩子はどうだ? 色々な問題があり過ぎて、寧ろ連れて帰って来ちまったことを後悔さえしそうだった。

 こんな厄介者を、俺はどう処理すればいいんだ? そこで咄嗟に思いついた策が、なんで俺の妹ってことになるのか……。そんなもので、隊士達を誤魔化すことが出来るのかと心配だった。しかしそれも杞憂だった。

 志摩子は意外にも、雪村と同じように隊士達に受け入れられ、今ではもう居て当然の存在へと変わり始めていた。触れ合えば変わっていくものもあるのかと、俺はあの二人に教えられてばかりだな。


「もうすぐすれば、平助が帰ってきやがるな。まぁ、貰う文の調子からして……綱道さんについての情報は何一つ得てなさそうだな。やはり一筋縄ではいかないか」


 いつまでもこんな時が続くなんて、そんなもん俺だって思っちゃいない。だがもし、もしも……叶うのならば。あいつと共に……。

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