第2章 風
「あ? なんだ貴様。俺達の邪魔をしないでもらいたいなぁ」
「……おい、ちょっと待てよ……あの羽織、何処かで」
男は例の新選組と同じ、浅葱色の羽織を着ていた。
「嫌がる女を連れて行こうなど、男の風上にもおけぬな。今手を引くならば、この場は見逃してやろう。だが、二度はない」
「はあ!? ふざけんてじゃねぇぞ、てめぇ!!」
「……きゃっ」
男が刀を抜刀すると、志摩子を押し退け羽織を着た男へと斬りかかる。だが、すぐさま男の動きは止まる。それはあまりにも唐突で、そこにいたもう一人の男と志摩子には何が起こったのかわかるはずもなかった。
気付いた先には、羽織を着た男は既に抜刀しており斬りかかってきた男の喉元を捉えていた。男が少しでも動けば、銀色の刃が鮮血で地を濡らすだろう。
「俺を新選組三番組組長、斎藤一と知っての行いか? ならば容赦はしない」
「ひっ……! 新選組だと!? す、すみませんでしたぁああああッ!!」
男達は血相掻いて、慌ただしくその場を走り去った。残ったのは男に押しのけられたせいで、地に尻餅をついてしまった志摩子と斎藤だけだった。
「あ……」
「大丈夫か?」
斎藤は刀をしまうと、すっと志摩子へと手を差し出した。志摩子は小さくお礼を口にすると、彼の手を取り立ち上がった。