第2章 風
「御用改めてである! 新選組だ。大人しくしろ」
とある骨董品屋に押し入る浅葱色の羽織を着た集団。志摩子は人だかりを掻き分け、ちらりと覗くと近くにいた人に尋ねてみる。
「すみません、あの方達……新選組とは何者なのですか?」
「あんた、そんなことも知らないのかい? 都において反幕府勢力を取り締まる集団さ。まぁ、大方この町の平和とやらは少なくとも、あの集団が保っていると言ってもいいくらいさ」
「そうなのですか……教えて頂きありがとうございます」
あまり問題に首をつっこむのもよくない、そう感じた志摩子は早々にその場を立ち去った。
その現場から離れてすぐ、いきなり目の前に見知らぬ男二人組が立ちはだかって来た。
「よう、お嬢ちゃん。一人かい?」
「俺達と一緒に遊ばねぇか?」
にやにやと笑いながら、頭からつま先までまるで品定めするかのように志摩子を舐めるように見つめている。不愉快な視線に志摩子は眉間に皺を寄せ、目を細めた。
「申し訳ありません。私は人と待ち合わせをしておりますので」
「おいおい、つれねぇじゃねぇか。なぁ?」
「そうだそうだ、ちょっとくらい俺らに付き合えって」
「……っ」
じりじりと近寄り、男が志摩子を手を使おうと腕を伸ばしてきた。志摩子はぎゅっと手を掴まれまいと、胸に抱く。そんな志摩子の様子が愉快で仕方ないのか、男二人はけらけらと笑い始める。
「こりゃいい! お前、どっかのいいとこのお嬢ってとこか? こりゃ高くつくな」
「ほら、こっちに来い!」
「触らないで下さい!!」
「おい、あんた達」
志摩子の背後で、凛と張りつめた声が聞こえてくる。咄嗟に振り返ると、漆黒の髪を横で結んで流し、襟巻をしている男が刀に手を添え男二人を睨み付けていた。