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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第12章 虚



「あの子は、そんな私に何も言わずただいつも通り接していてくれた。憐れみ一つ見せない、私と関わることに躊躇いなど微塵もない。彼女といれば、私は何も出来ない自分を許せる気がしていたんです。ですが……それは間違いのようだ」

「山南さん……」

「志摩子さんには、全てを知っていてもらいたいのです。捕虜としてではなく、新選組の医者として」

「……俺は、そんなつもりであいつに医学を学ぶことについて、口を挟まなかったわけじゃないんだが?」

「少なくとも、最近の隊士の傷の手当てを彼女に任せてから治りが早くなったと思います。これも彼女の適切な処置あってのもの。彼女を今更手離すのは、新選組にとって大きな損失です」


 土方は渋い顔を見せるが、山南の目に迷いはなかった。土方は大きく溜息をつくと、呆れたように口を開いた。


「まったく……山南さんには敵いそうにない。わかった、あいつにちゃんと……話す」

「ありがとうございます」


 変若水について、志摩子が知るということは新選組の大きな秘密を彼女が知るということ。それがどういうことなのかくらい、山南にもわかっているはずだ。


「どうにもこうにも、世の中ってのは上手く事が運ばないもんだな」


 改めて志摩子のために説明の場が設けられ、彼女は新選組の全てを知ることとなった。それにより、彼女が更に新選組と共に波乱の道を歩むことになろうとは。

 この時、誰も知る由はなかった。

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