お姉ちゃん大好き(黒子紫原ショタ夢)ライバルは赤司様
第1章 お姉ちゃんと一緒
木曜日、今日も元気に敦君はあたしの家に寄り道をする。かわいい鼻歌なんて歌って。
すると店の前に高そうな黒塗りの車が止まっていた。
(征十郎君だ……)
ピンと背筋を伸ばして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「だ~れ、あの人」
「常連さんだよ」
「ふぅん」
敦君はつまらなさそうに征十郎君を見た。
そしてつかつかと歩み寄っていって言った。
「狙いでしょ、あんた」
「は!?」
あたしは変な声を上げてしまう。
だって、ねぇ。
冗談きついよ敦君。
征十郎君は、あたしんちのお菓子が好きなだけなんだから。
「そうだったらどうだろうね?」
征十郎君も面白がって煽るし。
「オレ、の婚約者だから」
「へえ、だったら僕にどう関係あるっていうんだ?」
ごもっともです征十郎君。
そもそも婚約者じゃないけど。
「絶対渡さないから」
「おもしろいな、君。名前は?」
「紫原敦」
「僕は赤司征十郎。小学1年生だ」
「同じ歳だし」
その言葉に、征十郎君の目がカッと見開かれる。
「……へぇ」
にんまりと、口元を釣り上げて征十郎君は笑う。
「征十郎君、今日の注文のケーキできてるから、持ってて」
「ありがとうさん」
「いつもありがとう」
「君の笑顔が見れるなら、わざわざお店に赴くかいもあるというものだよ」
さっきから征十郎君は敦君をからかうのをやめない。
だからあたしはそっと彼に耳打ちした。
「ごめん、あの子をからかうのはやめてあげて」
「からかう?」
「あたしに気がある振りするのは、やめて」
「まさか」
「え?」
「振りなんかじゃないよ、最初から一目ぼれさ」
征十郎君の言葉に、めまいがした。
そんな、馬鹿な。あたし普通の小学6年生ですよ!?
「取りに来るだけなら僕じゃなくてもいいだろう?」
たしかに、それはそうだけど……。
まさかそんな理由でわざわざ毎日通ってきてくれてただなんて……。
「おね~ちゃん、こいつ毎日きてんの?」
「こいつとは失礼だね、君。頭が高いよ」
「でかいのは生まれつきだしほっとけし」
(通じてないよ、征十郎君……)
「じゃあ、オレも毎日ここ来るし!」
「……えっ」
「僕も全種類網羅しても毎日来よう」
「えっえっ」
こうして、あたしをめぐる二人の男の子の戦いが新たにスタートしたのだった。