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【CDC企画】The Premium Edition

第1章 Cœur Ganache Noir(月詠:悲恋)


そして負けた後も、アスカは屈辱を味わい続けた。

地雷亜は月詠に対して、明確な贔屓をしている。優秀な一番弟子と言うだけあって、地雷亜は月詠に全てを捧げていた。吉原の頭としての「なんたるか」を、惜しみなく教えていたのである。その贔屓は敵同士となった今でも、明確なままだ。

何故「まだ贔屓がある」と分かるのか。

簡単すぎる問題だ。答えは、アスカの扱いが雑だからである。

地雷亜とは敵として戦い、同じ敗北を味わった月詠とアスカ。同じ敵意を師匠に向けたにも関わらず、負けた後の対応は極端に違う。月詠の場合、地雷亜は彼女をまるで芸術作品として扱っていた。華やかな蝶を蜘蛛の巣に飾り付けるかのように、彼は丁寧いに月詠を忍糸に括らせる。

一方、アスカはまるで蜘蛛に体液を吸い取られたハエの亡骸みたいな扱いだった。地雷亜との戦いに負けた後、アスカは忍糸で適当に巻かれ、部屋の隅へと放り投げられる。アスカの体勢などにまるで気にも留めず、体の節々を痛がる彼女を、文字通り無視していた。

何もできない無力感。それだけでもアスカにとって最悪だと言うのに、更にあの男が場面に加わった。

鳳仙との戦いで「救世主」と呼ばれたソイツは、見事に月詠を助け出したのである。月詠に危害を加えようとした地雷亜を阻止し払いのけ、そして蜘蛛の糸から彼女を脱出させた。助けに入った銀時が月詠を抱き上げたのも、その時だ。一瞬ではあるものの、互いに真剣な眼差しを持ちながら見つめ合う二人を、部屋の片隅から覗き見ることしか出来なかったのを、アスカはよく覚えている。

単純に美しかった。

二人とも体はボロボロのはずなのに、どこか輝いても見えたのである。日輪や本物の太陽よりも強い光を放つ銀時(たましい)。そしてその輝きを受け止め、優しく反射させる月詠(たましい)。二人だからこそ成り立つ光景がそこにはあった。二人だけの世界だからこそ、成り立つ光景がそこにはあった。
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