第29章 反乱【阿伏兎】
「おま…持ってんなら俺が採ってくる必要なかったじゃねーか!」
「持ってなかったわよ?これも採ってきてもらったの。」
「……俺が持ってきた意味…というか、こんなくだらねえ事、他に誰に頼んだんだよ…」
「他の団員。今回の任務に同行してた夜兎じゃない天人さん。」
「は?」
たしかさっき団員が、同行者が敵に毒を盛られたとか言って…
「やっぱり夜兎には効かないのね。阿伏兎に頼んで良かった♪この草、適切な処理をしないまま触ったら死んじゃうのよ。」
………何だと。
「あ、大丈夫!症状はすぐ出るハズだから、今ピンピンしてるって事は阿伏兎は大丈夫ってこと。」
「……症状ってどんなだ。」
「呼吸困難なって、血が色んな所から出てくるの。主に目とか鼻とか耳かな?」
「持ってきたソイツはどうした。」
「知ーらない。鼻血出しながら慌てて出てっちゃったから。もう死んだんじゃない?あーあ…効果の経過、レポート書きたかったのにな。」
コイツ、やっぱ危ねえ。
「解毒剤は。」
「今研究中。なに?怖くなったの?」
「いや……」
こんなにニコニコしてる奴に何を言っても無駄だろう。
やはり、早々に始末する必要がありそうだ。
「大丈夫よ。夜兎は強いもの。私のお気に入りだから、何かあってもちゃんと助けてあげるって♪」
嘘か本当か分からぬ笑顔に、俺は真顔で冷たい視線を送って凛の部屋を後にした。