第28章 別れの日【土方十四郎】
「土方さん。」
「…あいつらはどうしてる。」
「皆さん一緒にいます…ミツバさんの側に。」
「そうか…」
土方は振り返らない。
背中が、泣いていた。
「近藤さん達んとこ行っとけ。俺もすぐ行く。」
「……その命は聞けません。」
「何を言ってる。早く行け。」
「側にいます。私は土方さんの小姓だから。」
「小姓なら…言うこと聞けよ。」
一人になりたいのは分かっている。
でもそんなあなたを一人にしてはおけない。
凛は土方の背にそっと寄り添った。
「今は私しかいません。安心して吐き出してください。」
「…ふっ…何言ってやがんだ、てめぇは。」
でも土方は凛を振り払わなかった。
「溜め込まないでください。悲しみも怒りも、何でも自分の中に詰め込まないでください。」
「溜め込んでねぇ。」
「そんな土方さんだから、そんな危うい土方さんだから、放っておけないんです。」
「危うくなんかねぇ…」
「いいえ。だから私決めたんです。最後までその危うさを案じ続けたミツバさんのためにも、私が受け止めてみせます。」
土方の肩が小さく揺れた。
「私は、土方さんの小姓ですから。」