第28章 別れの日【土方十四郎】
「…ふっ…ガキのくせに。」
そう言ってしばらく無言が続いた後、土方が少しずつ口を開いた。
「俺は…結局、何も守れなかった。」
そんな事ない。
「何も…してやれなかった…!」
凛はただ、土方の背で首を振る。
「俺は逃げてただけだ!」
土方の体は震えていた。
「あいつを!幸せに…してやれなかった!!」
失った悲しみ、自分への怒り
それがひしひしと伝わる叫び。
「土方さん…」
痛いほどそれが伝わり、凛はギュッと後ろから土方を抱きしめた。
「………おい。」
「はい……っ!?」
そして次の瞬間には、凛は土方に床に組み敷かれていた。
「土方さ…」
「嫌なら全力で抵抗してくれ。」
「何を…」
「このままだと…俺は他の女を想いながらお前を抱く。」
瞳を見つれば、土方は逸らすことなく凛の視線を受け止めた。
目は悲しみに揺れ、体が怒りで震えている。
彼は不器用なのだ。
自分の中にあるその感情をどうすればいいのか、上手く吐き出す方法が分からないのだろう。
凛は真顔でそっと土方の頬を撫でた。
「受け止める……私はそう言いましたから。」
そう言うと、荒々しい口づけが上から降ってきた。