第28章 別れの日【土方十四郎】
雨も降り、蔵場との戦いは易しいものではなかった。
凛は山崎と共に行動していたため危険に晒される事はなかった。
だがいくら鬼の副長とはいえ、土方一人の力には限界がある。
山崎は土方の「秘密にする」という言い付けを破り、大江戸病院へと走った。
「(土方さん…あと少し…もう少しだけ耐えてください!)」
凛だって真選組の一員。
戦闘能力は高くないが奇襲をかけるくらいは出来る。
土方を遠くから狙う敵を順次潰していた。
そしてようやく土方の近くにまで来た。
「俺はただ…惚れた女には…幸せになって欲しいだけだ。」
聞こえてきたのは土方の告白。
今まで本人が「惚れてる」と認めた事はない。
自分に向けられた言葉ではないけれど、あの土方が本音を告げた。
悲しみが無いとは言わない。
だが、それ以上に安堵を感じ、涙が出てきた。
「(泣いてはダメ。土方さんの方がよっぽど……)」
それでも涙は止まることなく、雨と共に地面へと消えていった。