第24章 進路相談【坂田銀八】
「ったく…ほら、用紙もう一枚やるから。書き直してまた提出しろ。」
「……はい。」
「お前の良識を信じる。次はないぞ。」
「……はい。」
凛はしょんぼりと肩を落とした。
それを見かねたのか、銀八は凛の頬にそっと手を当てて正面を向かせた。
「え……」
向くと、銀八の顔がグイッと近づいてきた。
「(キス…される…っ!)」
だが、銀八の顔はすぐに止まった。
「…ちゃんと、書けよ。」
「…………はい。」
素直に返事をしたら、銀八は何もせず凛から遠ざかっていった。
「面談は終わりだ。気を付けて帰れよ。」
「………………。」
どうやらもう銀八には取りつく島もない。
凛はトキメキと不安の混ざった気持ちを抱えたまま、大人しく教室を後にした。
教室を出る間際、銀八の呟いた言葉を聞けずに。
「顔真っ赤にしやがって……可愛いけどお預けだ、ばーか。」
銀八の顔は愛しい者を見る目そのものだった。