第16章 取り調べ【桂小太郎】
そのあと凛は必死に生き延びた。
助けてくれたあの人が生きているか死んでいるかも分からなかったが…
その人に言われた通り、自分が出来る事を一つずつして、そして警察になったのだ。
「なぜ警察官になったのか、ですって?」
凛は桂を見た。
凛の目には強い光が宿っている。
「この手で理想とする国をつくるためよ。今の時代を担う一人の国民として、ね。」
「ほう…そのために、この俺や他の志士を捕まえると。そなたの理想の中で我々は"悪"か?」
「それは……」
正直、戸惑いはある。
桂は穏健派でむしろ過激派の鎮静剤として必要なくらいだ。
返答に困っていると桂から信じられない事を言われた。
「こちら側につかないか。」
「は?攘夷志士になれって?」
「少なくとも、規則に縛られた警察よりは動きやすいぞ。自由に自分の正義を貫ける。」
こいつは何を言っている。
まさか警察官である私を勧誘しているのか。
「それに、美人だ。」
そう言って桂は凛の顎を掴んでクイと上を向かせた。
「ふざけないで。」
だが…なぜか手を振り払う事が出来ない…