第16章 取り調べ【桂小太郎】
だが次の瞬間
『ぐあっ!』
『うぁ…っ!!』
凛を襲っていた天人達がいきなり息絶えた。
後ろに立っている一人の男が斬ったようだ。
『大丈夫か。』
『………。』
『礼の一つも言えぬか。』
『た、頼んでない…っ!』
いっそ死んだ方が楽だと思ったのに…
『命をみだりに散らすな。』
生きていたって…もう……
『この国にはそなたのような若い者がまだ必要だ。新時代を築くために。』
こんな国…
『恨むな。憎しみからは何も得られぬぞ。』
男は立ち上がって歩き出す。
『悔しいのなら、国を憂い、その手で理想とする国をつくれ。新時代を担う一人の国民として出来る事をしろ。』
凛を振り返った男の顔は、逆光でよく見えなかった。
そして凛達の前では天人が大量に武器を構えていた。
『諦めるな。そなたには未来がある。この戦争も永遠ではない。その先を見据えて…強くなれ。』
そう言って男は凛の頭をクシャッと撫で、天人の中に飛び込んでいった。