第16章 取り調べ【桂小太郎】
昼食後も取り調べは続いた。
だが桂ののらりくらりとした対応に凛の質問はことごとくかわされてしまう。
段々、真面目に質問するのがアホらしく思えてきた。
「…はぁ…あなた本当に攘夷志士?」
「無論だ。」
「らしからぬ志士ね。なんで攘夷志士なんてまだしてるんですか。警察に追っかけられて、隠れて過ごして…」
「では貴様はなぜ警察官になったのだ。」
「え…」
逆に質問されるとは思わなかった。
「なぜって…それは…」
凛が警察官になったのには、幼少期に体験した事が関係していた。
凛はまだ幼い頃に攘夷戦争を経験した。
両親を殺され、家を焼かれ、どう生き延びればいいのか、そもそも生き延びるべきなのかも分からなかった時
『ガキがいるぜ!』
『ガキは締まりがいいんだ。一発ヤってから殺そうぜ。』
天人に襲われそうになった。
『いやぁ…っ!誰かっ!!助けムグッ!!』
『黙れガキ。ここには誰も来ねえよ。ほとんど逃げちまったしな。この村はもう見捨てられたんだよ。』
体を這いずりまわる手が気持ち悪くて、絶望した。
誰も助けてくれない。
手を差し伸べてくれない。
天人なんて…国なんて…滅びてしまえ。
そう強く思い、死を覚悟した。