第13章 初雪【高杉晋助】
煌びやかでなくても安い値段で好きにヤらせてくれるというので、凛のいる店に来る侍もいなくはない。
だが高杉は別格だった。
卑しい雰囲気は全く無く、女を虐げる事もしない。
そんな高杉のそばにいるのは、凛にとって安心感を得られるものだった。
愛し合っている訳ではなくても、抱かれるのすら癒しのように感じた。
「煙草を…貰えるか。」
「ええ。こちらに。」
凛は高杉の煙管を受け取り、煙草を詰めて火をつけて渡した。
「…………………。」
高杉は黙ったまま煙を一つ吐き出すと、そのまま襖を開けてそこにもたれかかるように座った。
夜空では満月が冷たい光を放っていた。
「今日は一段と冷え込んでおります。お風邪を召されますよ。」
凛は高杉に上着をかけその横に座った。
― 安らぎの場をくださる高杉様に少しでも落ち着く時間を差し上げたい ―
凛の心はそれだけだ。