第2章 僕の特別はあなただけ*黒子*
「僕はさんより年下ですし、一緒にいられる時間も限られています。だから、今日クラスメイトの方と楽しそうに話しているのを見て嫉妬してしまったんです。」
「…嫉妬?」
「はい。…欲を言ってしまえば、もっと一緒にいたいと思っていますし、僕以外の男の方がさんに近付かないでほしいと思う時もあります。」
言ってしまった。
恥ずかしいくらい正直に見せてしまった自分の心。
この気持ちを重いと取られてしまったら、と不安の波に苛まれる。
恐る恐る彼女に視線を移すと、自分の口元を両頬で覆っていた。
「…さん、どうしましたか?」
顔を覗き込んでみると、先程の強張った表情が緩んで、目元に笑みが浮かんでいるのが見えた。
「…ごめん。私、今嬉しいと思ってる。」
「嬉しい、ですか?」
まさかそんな反応が返ってくるとは思っていなかったので、不意を付かれてしまった。
「うん。…好きな人からそんな風に言ってもらえるんだから。私だって不安だよ。だってテツくんの周りには私よりも若い女の子がいるんだから。」
「若いなんて…一歳なんてそう変わりませんよ。」
「その言葉、さっきのテツくんにそのままお返しします。」
自分の口から出た言葉にはっとして、思わず二人顔を見合わせて笑ってしまった。
その笑顔を見ているだけで、さっきまでの靄がかかったような心の中が、ぱっと晴れた。
「さん。」
「ん?」
「気付かせてくれてありがとうございます。僕はあなただから好きになったんです。」
「…うん。…私もだよ。」
意を決して、二人の距離を縮めて、小さな肩に手を添えて。
特別なあなたに、くちづけを。
僕の特別はあなただけ。