第2章 僕の特別はあなただけ*黒子*
移動教室で2年生の階を通る時は、密かにわくわくしている。
隣を歩く火神くんと他愛もない会話をしながらも、気持ちはどこか浮ついていて、自分でも無意識のうちに彼女の姿を探してしまっている。
視界の中に彼女の姿が写り込み、口元が綻びそうになったが、一瞬にして表情が強張ってしまった。
目に飛び込んできたのは、男の先輩と楽しそうに話す彼女だった。
教室で話しているところを見ると、きっとクラスメイトだ。
わかっている、わかっているはずだけど。
一年の差はあまりにも大きくて、壁のように立ちはだかる。
日々一緒にいる時間は昼休みの図書室の時と、たまに部活が休みの時に出かける時くらい。
自分の勝手で時間が取れないのに、生意気にも頭を過ってしまう。
僕以外の男の人と仲良くしないでほしい。
一瞬彼女と視線が重なったような気がしたけれど、今は素直に喜べず、気が付かないふりをして足を進めた。