第3章 この気持ちを何と呼ぶ*紫原*
「アツシ、最近何かあった?」
部活後の寮への帰り道に、室ちんが不意に尋ねてきた。
「なんでー?」
「何だか楽しそうにしていると思えば、時々何か考えこんでいるようだから。」
「…よく見てるねー。」
室ちんには何故か全部見透かされている気がする。
付き合いそんなに長くないのに。
でも自分じゃわからないこの忙しい気持ちの答えを室ちんならわかるかもしれない。
「…同じクラスにさー、ちんって子がいて、隣の席になったんだー。それから何か教室行くのが楽しくなってさ。」
「ちんっていうのは女の子?」
「そー。一緒にいると楽しいんだけど、たまにイライラする時もあるんだよねー。」
すると室ちんは一息ついて、何か試すように問い掛けてきた。
「…アツシは彼女に対してどういう時にイライラする?」
「えー?…ちんが他のやつと喋ってる時とか。」
思い出すだけで捻り潰したくなる記憶に唇を尖らせていると、室ちんはにっこり笑って口を開いた。
「別にさんはアツシの彼女じゃないんだから問題はないよね?」
「確かにそーだけどー…。」
そうなんだけど、納得いかない。
ただのクラスメイトのはずだけど、ちんは何か違う。
「アツシはさんに自分以外の男と話してほしくないと思ってるんじゃない?」
「うん…。そーだねー。」
「…好きだから独り占めしたいと思うんじゃないかな。」
「…え?」
「俺が言えるのはここまでだよ。あとはアツシが決めることだと思うから。」
気付けば寮は目の前で、お互いの部屋へと向かい、自分の部屋に辿り着いてちんと過ごした時間と室ちんの言葉を思い巡らせた。
…うん。
薄々思ってはいたけど、この気持ちの答えがはっきり見えた。