第8章 *New choice。
体育館の掃除も終わり、それぞれが帰路につく。
大体皆帰る方向は同じだから、固まってお喋りしながら歩く暗い夜道。
私はこの時間がお気に入りだ。
「それにしてもよ〜。
あの優男のサーブ凄かったなァ、最初からアレやられたらヤバかったぜ…」
今日の試合後半を思い返しつつ田中先輩が口を開いた。
確かにあのサーブは威力、コントロール共に凄かったけど、セッターとしての及川徹のプレーも見たかった。
「さすが影山と同中の先輩―…」
「え、同中の先輩!?」
田中先輩の発言に思わず声を上げてしまい慌てて口をおさえる。
言われてみれば、及川徹がベストセッター賞を取った時の所属校は北川第一だったような気がする。
それなら妙に親しげな名前の呼び方にも、やけに影山くんに絡むのにも納得がいく。
「なんだ、知らなかったのか?」
「知らなかったというか、気づいてなかったです……」
たしか北川第一から青城に進学するバレー部員は多いと聞いたことがあるから、もしかしたら中学時代の影山くんの同級生も居たのかもしれない。
…本人にはやすやす聞けないけれど。