第8章 *New choice。
―烏野高校 第2体育館―
「よし!じゃあ軽く掃除して終了!
お疲れした!」
澤村先輩の掛け声で1年生は各々モップ掛けに取りかかる。
立ったまま寝てるふわふわ頭が目に入ると、本当にどこまでも器用な子だな、なんて思わず笑ってしまいそうになる。
「日向、起きて」
「zzz…」
「…ダメか」
肩を軽く揺らしてみても目を覚ます気配は無い。
仕方なくモップを取って体育用具室へと持っていくと、真っ二つに折れたまま跳び箱に立てかけてあるモップを見つけた。
「なんだこれ」
「あ、山口くん
このモップ危ないよね、捨てないのかな」
掃除を終えて片付けに来た山口くんもそのモップを見つければ不思議そうに持ち上げる。
「このまっ二つのモップ、危ないから捨てちゃって良いですかーあ?」
「いいんだ!それは!」
用具室から山口くんが問いかけると、菅原先輩が焦ったように駆け寄って来た。
「でもこれ、もう使えないんじゃ…」
「…いいんだ」
「?」
「直せばまた使えるだろ…」
はてなマークを浮かべる私と山口くん。
モップなら他に数は揃っているのに、なんでそう言うのだろうか、私は全く分からなかった。
真っ二つに折れたモップは、直したとしても使いづらいだろうに。
それでも、折れたモップを見つめる菅原先輩の顔が”守護神”の話をしていたあの時と同じだったからか、捨てない理由を問いただせずにいた。