第9章 *A guardian deity
「アホッ」
気を取り直してもう一本、ボールを弾ませトスを上げる。
ドギュ、と重い音をたてて飛んでいったボールは今度こそペットボトルに命中する
……と、思っていた。
キュッ
床とシューズの擦れる音と同時にボールの落下点に入る小さな人影。
ドッ…
ボールは勢いと回転を失い、きっちりセッターのいる位置へ弧を描いて落ちた。
まさに完璧なサーブレシーブ。
「おおーっ、すっげぇサーブじゃねーか
すげえ奴入って来たな」
あまりに急な登場、そしてあまりに綺麗なレシーブに私と日向、影山くんはただただぽかんと口を開けるしかなかった。
「おお~っ
ノヤっさぁ~ん!!」
田中先輩の声でハッと我に返る。
「西谷!!」
もしかしてこの人が……
「あ!日向、影山、谷口さん
2年の西谷だよ」
「あっ、チワース!!」
「こ、コンチワっす!!」
烏野の守護神…!
「おー……って、オイ、女子がいるじゃねーか!」
「は、ハイ!1年の谷口綾乃です!
マネージャーやらせてもらってます!」
突如向けられた視線に肩が跳ねる。
声、でかいな。
「そうだぜノヤっさん、聞いて驚け!
マネージャーが増えたおかげで……俺たちは潔子さんの笑顔を毎日拝めるようになったんだ」
「なん…だと…!!オイ、1年ガール!」
「へ、うわぁ!?」
田中先輩が何やら真剣な顔で語ると、西谷先輩もハッとして急に両手を握ってきた。
「女子がいると潔子さんが喜ぶ!大歓迎だ!!」
「あ、ありがとうございます…?」
なるほど、この人も清水先輩親衛隊の1人なのか。