第7章 * "Great King"
………―ガラッ
「…着いた」
「あ、ありがとう…」
あれからお互い一言も交わさないまま廊下を歩き続け、やっと保健室に辿り着いた。
影山くんはシンと静まり返った保健室をぐるりと見回せば、ベッドの上に私をゆっくりとおろしてくれた。
「…誰も、居ないみたいだね……」
「とりあえず、具合良くなるまではここで寝てろ。」
「でもっ、試合……っ」
「試合ならちゃんと勝ってくる」
勢い良く上半身だけを起こした私の肩を掴み、影山くんは真剣な表情を浮かべた。
こんな顔見せられると、信じないわけにはいかないな……なんて思ってしまう。
私の負けだ。
「……わかった、おとなしくしておく」
本当は体調なんて気にせずに今すぐここを飛び出して行きたいけど、影山くんに……みんなにこれ以上心配をかけさせるわけにもいかない。
それに、烏野は絶対に勝つ…そんな気がした。
上半身を再び倒すと、影山くんは「うしっ」と満足気な様子を見せて頬を緩ませた。
「……そんな顔もできるんだ…」
「あ?何か言ったか?」
「なんでもない………ありがとね、影山くん」
「??…うス」
「……じゃ、そろそろ行ってらっしゃい。がんばれ……!」
「当たり前だ」
ベッドに備えてあった毛布に包まったまま右手を突き出すと、影山くんも自分の右手をコツンとぶつけて保健室をあとにした。