第5章 *Place to stay。~Chance~
「おいお前らクイック使えんのか!?」
「クイック??」
「今みたいな速い攻撃だよ!!」
ずんずんと日向くんたちに近づいて、少し興奮気味に田中さんが問い掛けた。
「?全然。
おれポォーンて高く山なりに上がるトスしか打ったことないです」
「でも今やったろ!?
それにお前中学ん時、素人セッターのミスったトス打ったろ!ああいう…」
「えっ?でもどうやったか覚えてないです」
「~っ」
多分…日向くんは中学の時も、そして今も、全部無意識のうちに体が動いているのだろう。
無意識…というか、天然?自然?と言った方が近いのかもしれない。
「でもおれ、どんなトスでも打ちますよ!
打つからな!!」
「…合わせたこともないのに、速攻なんてまだ無理だろ」
身を乗り出して熱弁する日向くんに言い返す影山くんの言葉からは、さっき月島くんが話してた試合はきっと影山くん本人的に相当堪えてるんだ。そう感じ取れた気がした。
「"王様"らしくないんじゃなァ~い?」
そんな影山くんに、また月島くんが茶々を入れる。
「今打ち抜いてやるから待ってろっ!!」
「まァーたそんなムキになっちゃってさぁ
なんでもがむしゃらにやればいいってモンじゃないデショ」
「?」
「人には向き不向きがあるんだからさ」
「…確かに中学ん時も…今も…おれ跳んでも跳んでもブロックに止められてばっかだ」
悔しいけど、月島くんが言ったらすごく説得力がある。
バレーボールは"高さ"が重要な競技。
いくら高く跳べても、圧倒的な身長差は埋まらない。