第3章 *Place to stay。~Necessity~
…あれから日向くんの攻撃は、月島くんに止められてばっかりだ。
ピーッ
山口くんのサーブがネットにかかり、影山くんにサーブが回ってきた。
ドッ
「山口」
「任せろツッキー!」
去年より確実に磨きがかかっていた影山くんの強烈サーブは呆気なく拾われ、月島くんチームに1点が入った。
「あのっ、菅原さん」
「ん?」
「さっきレシーブした人って…」
「あー…うちの主将の澤村大地。
守備力安定してるだろ?」
「主将…さん…」
がっしりとした体つき、落ち着いた佇まい…確かに、あれが主将としての貫禄だと言われたら納得できる。
なんて一人で感心していたら、また月島くんの嫌味な声が聞こえた。
「ホラ王様!
そろそろ本気出した方がいいんじゃない?」
「!ムッ!?なんなんだお前!昨日からつっかかりやがって!!王様のトスってなんだ!!!」
"コート上の王様"
影山くんがそう呼ばれているのは私も知っているけど、王様のトスとはなんなんだろう…。
「君、コイツが何で"王様"って呼ばれてるのか知らないの?」
「?こいつが何かすげー上手いから…他の学校の奴がビビってそう呼んだとかじゃないの?」
私も日向くんと同じことを考えていた。
影山くんの精密なトスを恐れて、周りが呼び出した異名だ、と。
「ハハッ
そう思ってる奴もけっこう居ると思うけどね」
どうやら、私の考えは違っていたらしい。
"コート上の王様"という異名の発端とその意味について月島くんが発したのは、私が考えもつかなかった答えだった。