第3章 *Place to stay。~Necessity~
「…噂じゃ"コート上の王様"って異名、北川第一の連中がつけたらしいじゃん。"王様"のチームメイトがさ。意味は―――
自己チューの王様、横暴な独裁者
噂だけは聞いたことあったけど、あの試合見て納得いったよ。
横暴が行き過ぎてあの決勝、ベンチに下げられてたもんね」
―あの試合とは、私が観に行った試合の決勝戦のことだろう。
あいにく都合が悪くて決勝までは観れなかったが、結果だけは把握していた。
それにしても、あの影山くんがベンチだなんて。
「―クイック使わないのも、あの決勝のせいでビビってるとか?」
影山くんの噂のことは何も知らない。だけど―…
私だって言っていいことと悪いことくらいの区別はつく。
「…月し
「谷口さん」
腹が立って声を上げようとした私は、菅原さんに止められた。
「…てめぇさっきからうるっせえんだよ」
「田中」
坊主頭……田中さんも同じように、澤村さんに止められる。
「…ああ、そうだ。
トスを上げた先に誰も居ないっつうのは心底怖ぇよ」
淡々と言葉を吐き出す影山くんの背中は、私が見てきた今までの彼では考えられないほどに切なかった。
「えっ、でもソレ中学のハナシでしょ?」
その背中を眺めていると、日向くんの声がスッと耳に入ってきた。
「おれにはちゃんとトス上がるから、別に関係ない。
どうやってお前をブチ抜くかだけが問題だ!」
そう言って月島くんをビシッと指さす日向くん。
これは……まっすぐで純粋な……素の日向くんの言葉だ。
だからこそ、なのかな。
日向くんを見ていると、少しだけ胸が痛むような気がした。