第6章 慶応三年二月十五日
「ほう…で、山崎何かもらったのか?」
「はい副長、襟巻を」
正直に答える山崎に、土方は少し驚いた様子で言う。
「なんだって襟巻なんざ…まさか首に巻くから首っ丈ってことか?」
「どうして知ってるんですか土方さん⁈」
「何を仰いますか副長⁉︎…雪村君?」
驚きながらも肯定する千鶴に、千鶴の言葉に驚く山崎。土方は苦笑を浮かべていた。
「そういうことか。まあ山崎、それに関しちゃお前の判断に任せる。応えるにしろ応えねぇにしろよく考えてからにしろよ」
「はい…ですが副長」
「野暮なことさせんじゃねぇよ」
「申し訳ありません」
山崎を一旦下がらせて土方は千鶴に問う。
「で、何時からだ?七条が山崎に惚れたのは」
「わかりません。でも多分最近の事じゃない気がします」
そうか、と呟き一人思案する土方に、千鶴が畳み掛ける。
「あの、土方さん。山崎さんに実桜ちゃんから情報を得ようとさせないで下さい。実桜ちゃんの気持ちを利用しないで下さい。お願いします」
苦笑しながら土方は山崎が下がった方を見やり、口を開いた。
「いくら俺でもそこまで野暮じゃねぇよ。ま、どうするかは山崎次第だ」
土方の言葉に胸をなでおろす千鶴。
緩やかに吹いた風は、少し春の気配がした。