黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
アリスも稼ぎに出ようと何度か考えたが、それはクライヴの方が完全に拒否。自らが働くからの一点張りである。幸い、秘書としての働きには申し分ない為シエルも二人が余裕を持って生活できる程度の給料を与えてはいるらしい。
「そういえば、アリスはセバスチャンとは最近どうなんだ?」
「どう……って?」
「あれからというもの、使用人からも聞いているがお前……あれと恋人らしい雰囲気がないというじゃないか」
「どうせメイリン辺りの情報でしょう? それ」
「話が早くて助かるな。で、どうなんだ?」
「どうって……」
この場にはシエル、クライヴ、アリスしかいない。別に言葉を渋る程ではないが……ただアリスには言いたくない理由があった。
「別になんだっていいでしょ?」
「そこまで口を閉ざすということは、セバスチャンと上手くいっていないのか?」
その一言により、アリスは重い口を開くことにする。溜息と共に漏れた言葉は、その場にいる誰もが予想していなかったことだった。
「上手くも何も、私はセバスチャンと何もないわよ」
「……は?」
「付き合っては、いないのですか?」
クライヴがそう言うと、アリスは目を細めて心なしかクライヴを睨んでいるように見つめている。
「あのね、皆何処か誤解しているみたいだからはっきり言っておくけどね……私とセバスチャンは付き合うとかそういうくっだらない関係ではないわけ!」
「ほぉ、この期に及んで言葉を濁すというのかな」
「違うわよ! 想いが通じ合えば貴方達の中では付き合うって方程式があるみたいだけど、私とセバスチャンの間にそんなものは不要なの」
「ああ……つまりは婚約をするからその過程はいらないと?」
「違うって言ってるでしょう!!」
アリスはバンッと強くシエルの仕事机を叩いて講義する。何もそこまで否定しなくても……とシエルが思っているのはここだけの話。あまりにも必死に食ってかかるものだから、シエルも少しだけ苦笑いを浮かべる。