黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「ああ、まだ残っていますね……」
「やっ……」
ベッドにアリスを押し倒して、セバスチャンは彼女の鎖骨を露出させる。そこには彼がつけたてであろう、赤い痕がいくつも残っていた。恥ずかしそうに目を逸らすアリスを見て、セバスチャンはくすっと笑む。
「十二時が過ぎるまで、骨の髄まで愛してあげますよ……アリス」
「こ……この変態っ!」
「ああそうだ、一つ忘れていました」
セバスチャンが器用に懐から小箱を取り出して、アリスへと手渡した。
「メリークリスマス、アリス。開けて下さい」
「……プレゼント?」
アリスはごそごそと包装をといて、箱を開けた。
中に入っていたのは、可愛らしくもシンプルなデザインのブレスレットだった。
「貸して下さい、着けてあげましょう」
アリスに跨ったまま、彼女の左手を取りセバスチャンはブレスレットをつける。夜の闇の中でも、差し込む月明かりに照らされてきらりと光っていた。
「……あり、がとう……」
「それは私からの、愛の手錠です」
「ば……っ!」
馬鹿じゃないの!? と言おうとしていたアリスの唇は、セバスチャンによって塞がれる。深く深く入り込んで、絡み合っては互いの体温で溶けてしまうくらいに熱い。
「……わ、私はプレゼントなんてないわよ……っ」
「……いりませんよ。人間が用意するプレゼントに興味はありませんから……私が興味を持つものがあるとするなら」
「……あっ」
セバスチャンの舌がアリスの胸元を這う。
「アリスだけですから。丸ごと、食べてしまいたいくらい……愛してます」
「……もう……っ」
熱い吐息と、だんだん肌に張り付いていく髪のことなど、互いに忘れていく。感じる熱に、快楽にただ溺れていくだけ。
愛している。その想いだけで、互いを縛る言葉も関係も二人にはいらないのかもしれない。
冷えた空気と共に、外では白い雪が降り始めていた。