黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「……坊ちゃん。この時計、止まっているように見えますが?」
「その時計の針が、深夜十二時になるまで休憩をやる。好きに過ごせ」
「……」
「それから、明日はいつも通りの時間に僕を起こせ」
渡された懐中時計は、丁度十二時五分前で針を止めていた。セバスチャンはシエルを見た。するとシエルは含み笑いを浮かべて、セバスチャンに告げる。
「メリークリスマス」
シエルは楽しげにセバスチャンに背を向けた。
セバスチャンはようやく時計の意味を理解し、いそいそと会場を後にした。
勿論向かう場所は、アリスのいる部屋。
部屋の前までやってくると、控えめにノックをする。
「アリス様、いらっしゃいますか?」
「いるけど……もしかしてディナーでも持ってきてくれたの?」
「その前に、少しだけお時間を頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「いいわよ。入りなさい」
ゆっくりと扉が開かれる。相変わらずアリスはのんびりとこたつに入りながら、本を読み漁っていた。どれも推理物で、どうやらアリスは推理小説が好きらしい。
「アリスはいつも、推理小説ばかり好んで読みますね」
「……休憩?」
「ええ、そうですよ。ご一緒しても宜しいですか?」
「どうぞ」
するとセバスチャンは何故かアリスの背後に回ると、後ろから抱きしめるような形でこたつへと入り込んだ。文句を言うのかと思いきや、アリスは黙ってセバスチャンに身体を預けていた。
「怒らないのですか……?」
「どうして怒る必要があるの?」
しかし、本を読みながらであった。