黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「いえ……いつもの貴女なら、嫌がりそうだと思いまして」
「……今日はクリスマスだからね」
そう口にしてしまえば、何もかもが特別になるような気がしていた。
この場所だけやけに静かで、この屋敷で盛大にクリスマスパーティーが行われていることさえ忘れるほどだ。セバスチャンはそっとアリスの肩に、顎を乗せた。
「アリスは……私の事が好きですか?」
「どうしたの、急に」
「好きだなと、思ったんです。貴女の事を」
「……な、何よ急に」
「動揺してますか?」
ぎゅっと、抱きしめる腕の力を強める。そうしてやると、アリスはついに集中できなくなったのか本を手離して軽くセバスチャンの方へと顔を向けた。
「……好きよ」
「……。すみません、もう一度言って頂けますか?」
「はあ!? 嫌に決まって……っ」
セバスチャンの瞳は閉じられて、優しくアリスへとキスを落とした。触れるだけのキス、すぐに離れてしまったけれどアリスの頬は赤く染まっていた。
「今日くらいは、いいでしょう……?」
セバスチャンはアリスを抱き上げ、こたつから出ていく。
「ちょっ……」
アリスの言葉を無視するように、そのままお姫様抱っこしたままアリスの与えられている部屋まで移動する。
灯りもつけないまま、ベッドへと降ろされると急にアリスは緊張を覚え始める。それもそうだろう、セバスチャンの言っている意味がわかってしまったのだから。