黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「はい、アリスですが?」
「アリス? 私よ、エリザベス。中に入ってもいいかしら?」
「どうぞ」
アリスの返答を合図に、エリザベスは扉を開けた。
室内にいるアリスは、本を読みながらこたつの中にずっぷり入っていた。見慣れない光景に、まずエリザベスは瞬きを繰り返した。
「アリス、それはなぁに?」
「これ……? これはね、ジャパニーズ暖炉よ!!」
「じゃ、ジャパニーズ暖炉……? 初めて聞く名前よ!」
「ふふ、なんでも遠い東の国に伝わる暖かくなる画期的なインテリアよ! この布団の中に入るとね、とっても暖かいの。ほら。エリザベスもそこにいては寒いでしょ? 一緒に入りなさい」
「いいの? じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね?」
エリザベスは嬉しそうにアリスと向かい合って座る。ふと、エリザベスは気になることがあり思い切ってアリスへと尋ねてみる。
「ねぇ、アリス」
「なぁに?」
「セバスチャンとは何処まで進んだの?」
「……はあ!?」
思いがけないエリザベスの言葉に、アリスは声を荒げた。まさかアリスがそんな反応を見せるとは思っていなかったのか、エリザベスは驚いたように「ご、ごめんなさいっ」と思わず誤ってしまう。
「あ……えっと、あのねエリザベス。私とセバスチャンは特に何も……」
「クリスマスなのに何もないっていうの!?」
「え……」
「確かに普段からイチャイチャしてないとは思っていたけど!」
「イチャイチャ……?」
「何もこの大事な日にいつも通りでいることはないでしょ!?」
「と言われてもね……セバスチャンはほら、今日はクリスマスパーティーの準備で忙しいわけだし」
アリスのその言葉を聞くと、エリザベスは落胆したかのように大きく溜息をついて肩を落とした。