黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「アリス様はパーティーには参加されないのですか?」
「私は人混みが嫌いなのよ。どうせシエルの客でしょ? なら私が無理に参加する必要もないわ」
「かしこまりました。では後程、ディナーをこちらにお持ちしても?」
「お願いするわ」
セバスチャンは会釈し、その場を後にする。
廊下を歩きながら、セバスチャンは懐から可愛らしく包装された小箱を見つめていた。
「……今日、これを彼女に渡すことは出来るのでしょうか」
もう一度小箱を懐へ入れ直すと、懐中時計で時刻を確認して忙しそうに屋敷内を駆け回り始めた。
一年に一度のイベントともなれば、盛大にお祝いするのが英国の習慣。屋敷内を少しずつクリスマスの飾りで埋め尽くし、セバスチャンとクライヴの協力のお陰で料理も会場の準備も整っていく。勿論、デザートも忘れずに。
シエルは玄関ホールに足を運び、クリスマスパーティーへ招いた客人リストを片手に一人玄関のドアを開けた。
「あら、シエル!」
「エリザベスか。ようこそ、というか約束の時間より一時間早いはずだが?」
「早くシエルに会いたくて来ちゃったの! 駄目だったかしら?」
「駄目というか……まだ屋敷内も飾り付けの途中で、少し楽しみが減ってしまうぞ?」
「いいの! 寧ろお手伝いしてあげたいくらいっ。ねぇ、アリス嬢は何処にいらっしゃる?」
「アリスか……? それなら」
シエルはアリスがいる和室への道を口頭で伝えると、エリザベスはぱたぱたと元気よく廊下を走って行った。
「まったく……女性が廊下を走るなと……」
そう言いつつも、シエル自身エリザベスに会えて嬉しいのか、心なしか口元が緩んでいた。
エリザベスはシエルに教えられた通りに突き進み、和室の扉へと到着する。思い切って扉をノックしてみた。