黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「坊ちゃん」
「なんだ?」
セバスチャンが名前を呼んだことで、反射的にシエルはセバスチャンへと視線を向けた。途端、まるでその隙を狙っていたかのようにセバスチャンがカードを引いた。
「ああ……申し訳ありません、坊ちゃん。どうやら私達の勝ちのようです」
アリスの手元にあるカードの合計は二十。セバスチャンが引いたのは、ハートのエースだった。
「ちっ……セバスチャンめ。わざと僕に視線を逸らさせたな?」
「何を仰っているのか、わかりかねます」
「……まぁ、いい。今日はクリスマスだからな」
そう口にするとシエルはその場から立ち上がった。
「アリス、どうやら今回の勝負は君の勝ちのようだ」
「ゲームの帝王であるシエルが、負けをこうもあっさり認めるとは意外じゃない?」
「僕だって素直に負けを認めることくらいあるさ」
そしてシエルは「こたつは君のものだ」と告げると、クライヴを連れてその場を去っていく。
「セバスチャン……貴方今、イカサマをしたでしょう」
「さあ? 何のことでしょうか」
「シエルの視線をカードから逸らすことで、袖から出したカードに気付かれない様にしていた。違うかしら?」
「私にはアリス様が何を仰っているのか、わかりません」
「あ、そう……まぁ読書したかったし。もういいわ」
改めてこたつの中へとアリスは入った。ぬくぬくと暖まりながら、本を読み始める。