黒執事 Christmas at midnight
第3章 後篇 聖なる時の選択を
「これは……どういうことかしら?」
十二月二十五日、午前の話。アリスは一人本を読むため、書庫を訪れた……まではよかったのだが。
「暖炉ついてないじゃないの! ちょっと! セバスチャン!!」
「はい? お呼びですか」
洗濯物籠を抱えたセバスチャンが「この忙しいのになんですか」と言いたげな顔で、部屋の扉を開けて顔を出した。
「貴方、数時間前に私言ったわよね!? ここを使うから暖めておいてねって」
「ええ……仰いました。私はその通りに致しましたよ」
「じゃあ、どうして暖炉の火がついてないの」
「……」
セバスチャンがしかめっ面で暖炉へと近付く。ついていない、とうわけではなかったが随分火が弱く今にも消えてしまいそうだ。
「一応ついていますよ」
「一応って何よ!? ……薪を追加してほしいのだけど」
「その件なのですが、実はアリス様が起床される前に問題が発生しておりまして」
「何よ、私が納得できるように言ってみなさいよ」
「はあ……では一度厨房を見に行ってみるのがいいかもしれません。一番ご納得頂けるかと」
「なんで厨房?」
「実は薪を切らしているのです。朝から」
「……薪を? あのファントムハイヴの執事ともあろう貴方が? 薪を? 切らしている??」
「その言い方、やめて頂けませんか。癪に障ります」
「ああ、気にしているのね。ごめんなさいね」
口ではそう言いつつも、アリス自身まったく悪いなどと思ってはいない顔だった。
セバスチャンの言う通り、仕方なく一度厨房の様子を見にやってくる。すると、中からは騒がしい声が響いていた。