黒執事 Christmas at midnight
第2章 前篇 聖なる時の選択を
「傷が開いたのね!? 大変……早く手当しなくちゃ」
「その必要はないぞ? 女。そいつの腕は俺が全て貰い受けてやる予定だからな。あっはっはっ」
アリスはグレイの手から剣を奪い、彼を庇うように構えて立つ。
「女、何の真似だ? 騎士の真似事か?」
周りにいた男達が笑い始める。手始めに、アリスは手前にいた男の肩を大きく切り裂いた。瞬間、その場の空気が一変するのを全身で感じながら。
「殺しはしないわ。でもね、これ以上やるつもりならこの私が容赦しない」
「アリス……引っ込んでて……よ」
「ごめん。グレイ」
アリスは誇らしげに微笑みながら、グレイを一瞥する。
「守られるだけの女の子ではいられないの」
男達が一斉に飛びかかってきたのを見て、舞うように剣を振う。
致命傷を避けながら、斬り付けて相手を牽制する。その実力差は、圧倒的だった。冷静に周りを見ながら動くアリスは、気が付けば立っているのは先程の大柄の男と彼女の二人だけだった。
「なかなかやるな、女。でも女の腕はいらないんだよなぁ……だから死ね」
「悲鳴を上げてやるつもりはないの。貴方こそ、覚悟なさい」
アリスの剣が一直線に男へ向かう。けれどそれを避け、男の斧が振り下ろされる。重い斧の一撃は、浴びると大惨事だが速度は遅いため避けるのは難しい事じゃない。
――これならいける!
そう思いアリスは大きく振り被り、男の腕を斬り付ける。
しかし、その傷はみるみる治癒されていく。